フューチャーセンターをつくろう
いつも、ありがとうございます。
いよいよフューチャーセンター本ができました!
「フューチャーセンターをつくろう
― 対話をイノベーションにつなげる仕組み」
5月末のフューチャーセンター・ウィークに向けて、100のFCセッションが立ち上がります。二年後には、1000のFCをつなげて行こうとがんばっています。これらの活動を支える、私たちのあり方や原則、そして基本的な考え方のベースになるものと信じています。
ぜひご覧になって下さい。
いよいよフューチャーセンター本ができました!
「フューチャーセンターをつくろう
― 対話をイノベーションにつなげる仕組み」
5月末のフューチャーセンター・ウィークに向けて、100のFCセッションが立ち上がります。二年後には、1000のFCをつなげて行こうとがんばっています。これらの活動を支える、私たちのあり方や原則、そして基本的な考え方のベースになるものと信じています。
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![]() | フューチャーセンターをつくろう ― 対話をイノベーションにつなげる仕組み (2012/04/24) 野村 恭彦 商品詳細を見る |
5.1 企業変革とイノベーション
この日、フューチャーセンターを立ち上げようという意志を持った企業7社、非営利の3団体が集い、学び合い、一緒に実践する場が、半年間のプログラムを打ち上げました。7つの企業は、大手電気通信メーカー2社、飲料食品メーカー、自動車メーカー、電子素材メーカー、空間設計会社、社会インフラ会社と、さまざまな業界から参加しました。非営利団体も、子供の教育、患者支援、高齢者支援と、多岐にわたりました。各社3名ずつのメンバーが参加しましたが、30人弱のコミュニティは、業界やセクターが違っても、いままで対話できなかった人たちの間に新たな関係性を生み出すことで、市場や社会のイノベーションを起こしていきたいという意志を持つ同志になりました。
このコミュニティメンバーが学んだことは、フューチャーセンター・セッションを開くとき、違う業界やセクターの同志ほど、頼りになるものはないということでした。企業が新しい発想でイノベーションに取り組もうとするとき、社会起業家の情熱と洞察力ほど、大きな刺激になるものはありませんでした。企業から来たメンバーが、自社の組織変革をねらったセッションでは、ここで出会った同志たちをいかに自社から来たメンバーにとっての「未来のステークホルダー」にするか、という点に皆こだわるようになりました。社内メンバーが自ら気づくことほど、その後の変革の後押しになるものはないからです。
企業がフューチャーセンターに取り組む理由には、次の三つのレベルがあります。
レベル1:企業の中に対話の文化を育みたい
レベル2:組織横断でスピーディに問題解決できるようにしたい
レベル3:社外ステークホルダーとともにイノベーションを起こしたい
興味深いことに、どのレベルの問題意識から入っても、結局同じようにレベル1から順にレベル3まで辿っていくことになります。なぜなら、レベル1がなければ2はなく、レベル2がなければ3はないからです。
企業が大きくなると、部門間にコミュニケーションの壁ができてしまいがちです。それぞれの事業部は、顧客に対して熱心に仕事をすればするほど、部分最適に陥っていきます。他の事業部と連携すれば、もっと大きなソリューションに発展する可能性があっても、自部門にとって売上最大になる提案をして満足しているのが常です。もし各事業部が、現場で回答できないニーズをフューチャーセンターに持ち込んだら、何が起きるでしょうか。フューチャーセンター・ディレクターが社内外の様々なステークホルダーを招いて、創造的かつスピーディに問題解決したならば、事業部は顧客に対して新たな付加価値を提供できるかもしれません。
フューチャーセンターに専門部隊を抱え込む必要はありません。フューチャーセンター・ディレクターはテーマに応じて、専門的な知見のある人、その領域の実践者、その問題解決時に活躍してほしい人などを招き、関係性を築く対話の場を持つのです。
企業がイノベーションに向かっていく上で、フューチャーセンターが有益であることを頭で理解することは難しくありません。しかし、本当に立ち上げるためには、「フューチャーセンターを立ち上げると、具体的にどんな成果が出るのか?」という疑問に答える必要があります。
ここに、「会社を変えようとする真面目なリーダーが陥りやすい罠」があります。それは、「フューチャーセンターがいかに自社に役立つかを論理的に説明し、成果を約束しようとする」ことです。企業人として正しい振る舞いなのですが、新しいパラダイムの仕事の価値を、古い分析的パラダイムの価値観で評価することになるからです。「フューチャーセンター・セッションをすれば新製品のアイデアが生まれるのか?」、「フューチャーセンター・セッションをしていけば新事業が生まれるのか?」といった他人事の質問は、要注意です。同じセッションに参加しても、そこからイノベーションを起こす人もいれば、何の気づきも得ずにもとの仕事に戻る人もいるのです。
フューチャーセンターを立ち上げようとする人には、「どうやったら他の社員の意識を変えられるか?」という問いを捨てて、「どうやったら自分は新しいパラダイムに変われるだろうか?」、「自分は、このアプローチを成果が出るまでやり抜く情熱を持ち続けられるだろうか?」という問いをもってほしいと思います。他人を説得することを手放すと、自分自身がまだやらなければならないことがたくさんある、ということに気づくでしょう。
「イノベーションが起きますよ」という説得をするよりも、「本当にイノベーションが起こせるだろうか」という自分自身の心の問いに向き合いましょう。その迫力は、必ず周囲に伝播するはずです。
このコミュニティメンバーが学んだことは、フューチャーセンター・セッションを開くとき、違う業界やセクターの同志ほど、頼りになるものはないということでした。企業が新しい発想でイノベーションに取り組もうとするとき、社会起業家の情熱と洞察力ほど、大きな刺激になるものはありませんでした。企業から来たメンバーが、自社の組織変革をねらったセッションでは、ここで出会った同志たちをいかに自社から来たメンバーにとっての「未来のステークホルダー」にするか、という点に皆こだわるようになりました。社内メンバーが自ら気づくことほど、その後の変革の後押しになるものはないからです。
企業がフューチャーセンターに取り組む理由には、次の三つのレベルがあります。
レベル1:企業の中に対話の文化を育みたい
レベル2:組織横断でスピーディに問題解決できるようにしたい
レベル3:社外ステークホルダーとともにイノベーションを起こしたい
興味深いことに、どのレベルの問題意識から入っても、結局同じようにレベル1から順にレベル3まで辿っていくことになります。なぜなら、レベル1がなければ2はなく、レベル2がなければ3はないからです。
企業が大きくなると、部門間にコミュニケーションの壁ができてしまいがちです。それぞれの事業部は、顧客に対して熱心に仕事をすればするほど、部分最適に陥っていきます。他の事業部と連携すれば、もっと大きなソリューションに発展する可能性があっても、自部門にとって売上最大になる提案をして満足しているのが常です。もし各事業部が、現場で回答できないニーズをフューチャーセンターに持ち込んだら、何が起きるでしょうか。フューチャーセンター・ディレクターが社内外の様々なステークホルダーを招いて、創造的かつスピーディに問題解決したならば、事業部は顧客に対して新たな付加価値を提供できるかもしれません。
フューチャーセンターに専門部隊を抱え込む必要はありません。フューチャーセンター・ディレクターはテーマに応じて、専門的な知見のある人、その領域の実践者、その問題解決時に活躍してほしい人などを招き、関係性を築く対話の場を持つのです。
企業がイノベーションに向かっていく上で、フューチャーセンターが有益であることを頭で理解することは難しくありません。しかし、本当に立ち上げるためには、「フューチャーセンターを立ち上げると、具体的にどんな成果が出るのか?」という疑問に答える必要があります。
ここに、「会社を変えようとする真面目なリーダーが陥りやすい罠」があります。それは、「フューチャーセンターがいかに自社に役立つかを論理的に説明し、成果を約束しようとする」ことです。企業人として正しい振る舞いなのですが、新しいパラダイムの仕事の価値を、古い分析的パラダイムの価値観で評価することになるからです。「フューチャーセンター・セッションをすれば新製品のアイデアが生まれるのか?」、「フューチャーセンター・セッションをしていけば新事業が生まれるのか?」といった他人事の質問は、要注意です。同じセッションに参加しても、そこからイノベーションを起こす人もいれば、何の気づきも得ずにもとの仕事に戻る人もいるのです。
フューチャーセンターを立ち上げようとする人には、「どうやったら他の社員の意識を変えられるか?」という問いを捨てて、「どうやったら自分は新しいパラダイムに変われるだろうか?」、「自分は、このアプローチを成果が出るまでやり抜く情熱を持ち続けられるだろうか?」という問いをもってほしいと思います。他人を説得することを手放すと、自分自身がまだやらなければならないことがたくさんある、ということに気づくでしょう。
「イノベーションが起きますよ」という説得をするよりも、「本当にイノベーションが起こせるだろうか」という自分自身の心の問いに向き合いましょう。その迫力は、必ず周囲に伝播するはずです。
5. フューチャーセンターによる変革
フューチャーセンターは、私たちの問題解決のアプローチを根本から変えてしまうかもしれません。
「我々の直面する重要な問題は、その問題を作ったときと同じ考えのレベルで解決することはできない」。アインシュタインの名言の通り、社会問題の多くは、分析的に一つの解を見つけることができません。
少子化で労働人口が減少すると、女性が働きに出る必要があります。女性が働くためには、保育園を充実させる必要があります。そのために保育園を規制緩和して増やします。保育士も大量に育成します。このロジックを重ねていくと、理想状態は、「女性はどんどん子供を産みながら、自分では一人も育てずに働き続ける」ことになります。このことが、本当に私たちの社会にとって、素晴らしいことなのかどうか、私には分かりません。
このようなロジックの落とし穴は、教育問題にも、介護問題にも、エネルギー問題にも当てはまります。一見正しそうなロジックが、一歩引いて鳥瞰してみると、おかしな結論に達しているのです。
社会問題だけではなく、企業内部の問題にも、そのまま当てはまります。たとえば製造業は、コスト削減をしなければ競争に勝てません。生産に続き、開発までも海外にアウトソーシングすることになります。そのために社員は英語を覚え、ノウハウの標準化を行い、海外出張して現地社員への技術移転を必死に行います。このロジックを重ねていくと、理想状態は、「海外社員が開発・生産を行い、日本では企画・マーケティングとコスト・品質管理を行っている」ことになります。これが、本当に私たちの求めている働き方なのかどうか、私には分かりません。
問題の解き方を変える必要があるのではないでしょうか。問題をあらかじめ定義して、ロジックで小問題に分解し、それぞれを専門知識によって解いていくやり方では、複雑な問題は解けないのではないでしょうか。もし一つの正解がないのなら、もっとクリエイティブに問題にアプローチする必要があるのではないでしょうか。
問題を分析するのではなく、クリエイティブに問題を解いていくには、人間の創造性や可能性を信じることが大切です。それは、矛盾して解けない問題に対して、もっとステークホルダーを広げて考える、というアプローチです。
この町だけで問題が解けないのならば、隣町と一緒に考えましょう。一社で解決できないのなら、他社と一緒に考えましょう。企業だけで解けないのなら、行政や市民と一緒に考えましょう。つねにオープンマインドで、関係性を広げ続ける「あり方」を選ぶのです。
そして、集団的な知恵と協調的アクションで、その問題にアプローチしていきます。勇気を持って。
「我々の直面する重要な問題は、その問題を作ったときと同じ考えのレベルで解決することはできない」。アインシュタインの名言の通り、社会問題の多くは、分析的に一つの解を見つけることができません。
少子化で労働人口が減少すると、女性が働きに出る必要があります。女性が働くためには、保育園を充実させる必要があります。そのために保育園を規制緩和して増やします。保育士も大量に育成します。このロジックを重ねていくと、理想状態は、「女性はどんどん子供を産みながら、自分では一人も育てずに働き続ける」ことになります。このことが、本当に私たちの社会にとって、素晴らしいことなのかどうか、私には分かりません。
このようなロジックの落とし穴は、教育問題にも、介護問題にも、エネルギー問題にも当てはまります。一見正しそうなロジックが、一歩引いて鳥瞰してみると、おかしな結論に達しているのです。
社会問題だけではなく、企業内部の問題にも、そのまま当てはまります。たとえば製造業は、コスト削減をしなければ競争に勝てません。生産に続き、開発までも海外にアウトソーシングすることになります。そのために社員は英語を覚え、ノウハウの標準化を行い、海外出張して現地社員への技術移転を必死に行います。このロジックを重ねていくと、理想状態は、「海外社員が開発・生産を行い、日本では企画・マーケティングとコスト・品質管理を行っている」ことになります。これが、本当に私たちの求めている働き方なのかどうか、私には分かりません。
問題の解き方を変える必要があるのではないでしょうか。問題をあらかじめ定義して、ロジックで小問題に分解し、それぞれを専門知識によって解いていくやり方では、複雑な問題は解けないのではないでしょうか。もし一つの正解がないのなら、もっとクリエイティブに問題にアプローチする必要があるのではないでしょうか。
問題を分析するのではなく、クリエイティブに問題を解いていくには、人間の創造性や可能性を信じることが大切です。それは、矛盾して解けない問題に対して、もっとステークホルダーを広げて考える、というアプローチです。
この町だけで問題が解けないのならば、隣町と一緒に考えましょう。一社で解決できないのなら、他社と一緒に考えましょう。企業だけで解けないのなら、行政や市民と一緒に考えましょう。つねにオープンマインドで、関係性を広げ続ける「あり方」を選ぶのです。
そして、集団的な知恵と協調的アクションで、その問題にアプローチしていきます。勇気を持って。
4.5 アクションを起こす
ダイアローグの達人であるボブ・スティルガー氏。その彼が、「フューチャーセンターがたんなるダイアローグと違うのは、参加した人たちが協調的なアクション(Collaborative Action)を起こすことだ」、と言ってくれてました。さらに、「日本に来てフューチャーセンターという概念を知って、30年にわたって途上国で自分が取り組んできたことが、まさにフューチャーセンターであるということに気づいた」と続けました。つまりそれほど、多様な人たちが自分事で対話し、そこから皆で協調的なアクションを起こしていくことが、世界のどこに行っても最も重要なことなのです。
ボブ・スティルガー氏
では、どうすればフューチャーセンターで対話されたことが、実行に移されるのでしょうか。セクターを越えて市民、行政、企業が対話をしたときに、それが現実世界で持続的な仕組み化されるためには、明確な方法論が必要です。その鍵は、(1)デザイン思考の方法論、(2)未来思考の方法論、(3)対話の方法論、の三つを的確に組み合わせることにあると思います。
その前にまず、各回のフューチャーセンター・セッションで、次のアクションにつながるものと、つながらないものの違いを考えてみましょう。
経験的に私自身が感じている「アクションにつながる場になる要因」は、(1)課題提起者が本気であること、(2)実行の力を持った参加者がいること、(3)ファシリテータが強い意志を持って関わること、の三点です。これらを実践するのが、ファシリテータとしての私の役割です。
多くのセッションは、課題提起者から相談を受けるところから始まります。その人の本気度を確かめ、もし表層的なテーマを持っていた場合は、何が本質的な課題か、コーチングで引き出していきます。そして、課題提起者が本当にやりたいこと、その情熱のありかを確認します。生半可な気持ちの課題ではセッションを開催できない、と突っぱねたりもします。それは、フューチャーセンター・セッションにお招きする多様な「未来のステークホルダー」に対する礼儀と言いますか、責任だと考えているからです。
課題提起者の情熱あるテーマが設定されたとすると、次に「実行力のある参加者」の選定に入ります。外部ゲストは、洞察や刺激を与えてくれる人で構いませんが、社内ゲストなど、セッション後に一緒に活動を進めていってほしい人を選ぶときは、慎重になる必要があります。最初は前向きで意識の高い人をできるだけ選び、第二回のセッションには、変わってほしい人を巻き込んでいきます。同じ意識を持ったコミュニティをだんだんと広げていく、そんなイメージを持って進めていきます。
そして最後に、「ファシリテータが強い意志を持って関わる」ことですが、これはフューチャーセンター・セッションの最中に発揮する力です。ファシリテータは、参加者全員に課題を達成する力があると信じて、当然その場に立つのですが、時には強い意志を示す必要があります。それは、一人ひとりの意識は変わり始めているのに、お互いが様子見をしていて、誰も一人で立ち上がることができない状態になったときです。
そんなとき、ファシリテータは強烈な意思表示をすべきです。「ぜったいやり抜きましょう。今が一番つらいタイミングだけど、ここを乗り越えれば絶対成功しますよ。私たちにはできる。一緒にやりませんか?」、と突っ走ります。もし、一人ひとりの準備が整っていなかったら、ここで白けまくるかもしれません。滑ってしまうわけです。つらいですね。ですが、数人でも準備のできた人がいたならば、このようなフライングに付いてきてくれるでしょう。彼ら彼女らが立ち上がったら、ファシリテータのペースメーカーとしての役割は終了です。自発的なイニシアティブに任せましょう。「熱くなりすぎちゃいましたね、ははは」といった感じで。
次に、フューチャーセンター・セッションを重ねていくことで、本当にイノベーションを起こしていけるのか、という課題を考えてみたいと思います。
イノベーションを実現する方法論として、これまで最も注目されてきたのが、デザイン思考だと思います。私も、長らく米国のIDEO社と一緒に仕事をしてきて、デザイン思考の持つ絶大なパワーを身体で感じています。しかし、日本国内ではデザイン思考は大きな成果を挙げては来ませんでした。それは、なぜなのでしょうか。
IDEOの場合、欧米企業は「実行を前提として大金を用意している」わけですから、この前提さえ作れれば、プロジェクトのアウトプットは多くの場合は採用され、少なくとも商品開発などの実行に進むことができます。実行できるかどうかとイノベーションが起きるかどうかは別なのですが、日本企業は、その一歩手前、「ワイルドなアイデアは実行されない」というところにボトルネックを持っています。つまり、せっかくデザイン思考で新しい視点のアイデアが生まれても、市場が見えないなどの理由で、商品開発のゴーが出ないケースが多いのです。正直これは、IDEO社員には理解できないことでした。「どうして君たちはこんなにお金をかけてプロジェクトを推進してきたのに、不確かだというだけの理由で次に進まないの?何のためにやっているの?」と、とまどいの言葉をもらったりもしました。
これは日本特有の問題かもしれませんが、少なくとも日本企業には「不確かなアイデアに投資しない」という、大きな特徴(あるいは問題)があるのです。つまりデザイン思考は、日本企業のイノベーションの必要条件であっても、十分条件には成り得ないのです。
ですが私はこのことで、「日本企業はイノベーションが苦手だ」とは言いたくはありませんでした。その後、私は未来思考の方法論と出会うことになります。
未来思考の方法論の代表格であるシナリオプランニングは、日本企業にすごく合った方法論です。なぜなら、複数のシナリオを提示して、それらに備える形でアクションを決める方法論なので、意思決定者にとっては説明責任が果たせて安全だからです。「それも一つの可能性」という形で、ワイルドなアイデアを採用することができます。デザイン思考のように、思いも寄らないアイデアに投資して、あとで誰が決めたのか、と責められるリスクもありません。
つまり、日本企業のイノベーションプロセスは、次のように考えればよいのです。
まずデザイン思考のプロセスで洞察を得て、そこからたくさんのアイデアを出していきます。続いてそのアイデアをベースに、未来思考で複数のシナリオを作成して、全員のコンセンサスを得るのです。そしてさらに、ダイアログを使って意思決定者、協力者、顧客などを巻き込んで、一緒にコンセプトを創り上げていきます。合議制の日本型組織でも、これら三つの方法論の組合せれば、イノベーション・プロセスを回していくことができるでしょう。
このように、フューチャーセンターがあれば、デザイン思考、未来思考、ダイアログを駆使して、イノベーションに向けてのアクションを起こしていけるようになるのです。
アクションを起こしていきましょう。
ボブ・スティルガー氏では、どうすればフューチャーセンターで対話されたことが、実行に移されるのでしょうか。セクターを越えて市民、行政、企業が対話をしたときに、それが現実世界で持続的な仕組み化されるためには、明確な方法論が必要です。その鍵は、(1)デザイン思考の方法論、(2)未来思考の方法論、(3)対話の方法論、の三つを的確に組み合わせることにあると思います。
その前にまず、各回のフューチャーセンター・セッションで、次のアクションにつながるものと、つながらないものの違いを考えてみましょう。
経験的に私自身が感じている「アクションにつながる場になる要因」は、(1)課題提起者が本気であること、(2)実行の力を持った参加者がいること、(3)ファシリテータが強い意志を持って関わること、の三点です。これらを実践するのが、ファシリテータとしての私の役割です。
多くのセッションは、課題提起者から相談を受けるところから始まります。その人の本気度を確かめ、もし表層的なテーマを持っていた場合は、何が本質的な課題か、コーチングで引き出していきます。そして、課題提起者が本当にやりたいこと、その情熱のありかを確認します。生半可な気持ちの課題ではセッションを開催できない、と突っぱねたりもします。それは、フューチャーセンター・セッションにお招きする多様な「未来のステークホルダー」に対する礼儀と言いますか、責任だと考えているからです。
課題提起者の情熱あるテーマが設定されたとすると、次に「実行力のある参加者」の選定に入ります。外部ゲストは、洞察や刺激を与えてくれる人で構いませんが、社内ゲストなど、セッション後に一緒に活動を進めていってほしい人を選ぶときは、慎重になる必要があります。最初は前向きで意識の高い人をできるだけ選び、第二回のセッションには、変わってほしい人を巻き込んでいきます。同じ意識を持ったコミュニティをだんだんと広げていく、そんなイメージを持って進めていきます。
そして最後に、「ファシリテータが強い意志を持って関わる」ことですが、これはフューチャーセンター・セッションの最中に発揮する力です。ファシリテータは、参加者全員に課題を達成する力があると信じて、当然その場に立つのですが、時には強い意志を示す必要があります。それは、一人ひとりの意識は変わり始めているのに、お互いが様子見をしていて、誰も一人で立ち上がることができない状態になったときです。
そんなとき、ファシリテータは強烈な意思表示をすべきです。「ぜったいやり抜きましょう。今が一番つらいタイミングだけど、ここを乗り越えれば絶対成功しますよ。私たちにはできる。一緒にやりませんか?」、と突っ走ります。もし、一人ひとりの準備が整っていなかったら、ここで白けまくるかもしれません。滑ってしまうわけです。つらいですね。ですが、数人でも準備のできた人がいたならば、このようなフライングに付いてきてくれるでしょう。彼ら彼女らが立ち上がったら、ファシリテータのペースメーカーとしての役割は終了です。自発的なイニシアティブに任せましょう。「熱くなりすぎちゃいましたね、ははは」といった感じで。
次に、フューチャーセンター・セッションを重ねていくことで、本当にイノベーションを起こしていけるのか、という課題を考えてみたいと思います。
イノベーションを実現する方法論として、これまで最も注目されてきたのが、デザイン思考だと思います。私も、長らく米国のIDEO社と一緒に仕事をしてきて、デザイン思考の持つ絶大なパワーを身体で感じています。しかし、日本国内ではデザイン思考は大きな成果を挙げては来ませんでした。それは、なぜなのでしょうか。
IDEOの場合、欧米企業は「実行を前提として大金を用意している」わけですから、この前提さえ作れれば、プロジェクトのアウトプットは多くの場合は採用され、少なくとも商品開発などの実行に進むことができます。実行できるかどうかとイノベーションが起きるかどうかは別なのですが、日本企業は、その一歩手前、「ワイルドなアイデアは実行されない」というところにボトルネックを持っています。つまり、せっかくデザイン思考で新しい視点のアイデアが生まれても、市場が見えないなどの理由で、商品開発のゴーが出ないケースが多いのです。正直これは、IDEO社員には理解できないことでした。「どうして君たちはこんなにお金をかけてプロジェクトを推進してきたのに、不確かだというだけの理由で次に進まないの?何のためにやっているの?」と、とまどいの言葉をもらったりもしました。
これは日本特有の問題かもしれませんが、少なくとも日本企業には「不確かなアイデアに投資しない」という、大きな特徴(あるいは問題)があるのです。つまりデザイン思考は、日本企業のイノベーションの必要条件であっても、十分条件には成り得ないのです。
ですが私はこのことで、「日本企業はイノベーションが苦手だ」とは言いたくはありませんでした。その後、私は未来思考の方法論と出会うことになります。
未来思考の方法論の代表格であるシナリオプランニングは、日本企業にすごく合った方法論です。なぜなら、複数のシナリオを提示して、それらに備える形でアクションを決める方法論なので、意思決定者にとっては説明責任が果たせて安全だからです。「それも一つの可能性」という形で、ワイルドなアイデアを採用することができます。デザイン思考のように、思いも寄らないアイデアに投資して、あとで誰が決めたのか、と責められるリスクもありません。
つまり、日本企業のイノベーションプロセスは、次のように考えればよいのです。
まずデザイン思考のプロセスで洞察を得て、そこからたくさんのアイデアを出していきます。続いてそのアイデアをベースに、未来思考で複数のシナリオを作成して、全員のコンセンサスを得るのです。そしてさらに、ダイアログを使って意思決定者、協力者、顧客などを巻き込んで、一緒にコンセプトを創り上げていきます。合議制の日本型組織でも、これら三つの方法論の組合せれば、イノベーション・プロセスを回していくことができるでしょう。
このように、フューチャーセンターがあれば、デザイン思考、未来思考、ダイアログを駆使して、イノベーションに向けてのアクションを起こしていけるようになるのです。
アクションを起こしていきましょう。
4.4 コミュニティを育む
「フューチャーセンターを立ち上げる」ことの本質は、新たな人のつながり、新たなコミュニティを育むことにあります。
企業内でフューチャーセンターを立ち上げるのであれば、組織横断の様々なテーマのコミュニティを育んでいくことになります。新製品開発が始まるとき、バリューチェイン横断のコミュニティを育成するかもしれません。グループ企業横断で、総務部門をつなぐコミュニティを育成することになるかもしれません。
同様に、地域のフューチャーセンターであれば、地域コミュニティを育むことに時間を費やすことになるでしょう。子育てのようなテーマでフューチャーセンターを立ち上げるならば、当然、その領域に関心の高い人たちのコミュニティを育成することになります。
次の10箇条は、2011年5月のフューチャーセンター・ウィークに開催した、4日間のフューチャーセンター・セッションでのキー・ファインディングです。題して、「コミュニティ中心経済の10原則」。これからのビジネス・エコシステムは、コミュニティを中心とした新たなパラダイムに突入する、というものでした。

「コミュニティ中心経済の10原則」
1. これからの社会は、「コミュニティの生成力」が成功指標になる。
2. これからの社会変化は、「相互に繋がったコミュニティ」によって伝播する。
3. これからの企業は、「市場から」ではなく「コミュニティから」発想して価値をつくる。
4. これからのイノベーションは、「新たなコミュニティの単位」の発見、可視化、活性化を実現することになる。
5. これからのワーカは、「組織から」ではなく「個のつながり(コミュニティ)」で仕事をつくる。
6. これからの仕事環境は、「組織に囲われた場所」ではなく、「コミュニティに開かれた場所」になる。
7. これからの人材育成は、「多様な人と人のつながり」により、「いつもの領域超え(冒険)」の機会をつくる。
8. これからの組織は、役割ではなく「人」として存在できる「安心な場(コミュニティ)」 になる。
9. これからの地域コミュニティは、世代や地域を超えてつながるための「主体性を引き出す劇場」を持つ。
10. これからの経済は、「コミュニティを中心に動く」ようになる。
つまり、コミュニティを育むことが、企業のマーケティング活動そのものになってくるということです。マーケティングの父であるコトラーは、このようなパラダイムシフトを「利用者がパートナーになる時代」という意味で、マーケティング3.0と名付けました。
このようなパラダイムシフトは、確実に起こりつつあります。ソーシャルメディアの台頭は、その前兆です。世の中に新しいアイデアを伝える力は、大企業のプレスリリースよりも、影響力のある個人のブログの方がすでに優ってきています。
行政や企業という組織体が世の中を動かしてきたのは、組織として蓄積してきた情報や知識の質も量も、個人やコミュニティを圧倒していたからです。また、組織内の情報共有の方が、組織を越えた情報共有よりも、明らかにコミュニケーション・コストが低かったからです。これを大きく変えたのが、情報通信革命であることは、疑う余地がありません。
すでに情報産業、コンサルティング業界などの知的業務では、「会社の中でできること」と「家やカフェでできること」の差が、ほとんどなくなってきました。このことが、社会起業家の影響力の増大や、コ・ワーキングスペースの急速な増加につながっています。
フューチャーセンターは、市民に社会変革のイニシアティブを移し、その結果、企業の商品・サービス開発のプロセスを一変させてしまうことになるでしょう。
企業内でフューチャーセンターを立ち上げるのであれば、組織横断の様々なテーマのコミュニティを育んでいくことになります。新製品開発が始まるとき、バリューチェイン横断のコミュニティを育成するかもしれません。グループ企業横断で、総務部門をつなぐコミュニティを育成することになるかもしれません。
同様に、地域のフューチャーセンターであれば、地域コミュニティを育むことに時間を費やすことになるでしょう。子育てのようなテーマでフューチャーセンターを立ち上げるならば、当然、その領域に関心の高い人たちのコミュニティを育成することになります。
次の10箇条は、2011年5月のフューチャーセンター・ウィークに開催した、4日間のフューチャーセンター・セッションでのキー・ファインディングです。題して、「コミュニティ中心経済の10原則」。これからのビジネス・エコシステムは、コミュニティを中心とした新たなパラダイムに突入する、というものでした。

「コミュニティ中心経済の10原則」
1. これからの社会は、「コミュニティの生成力」が成功指標になる。
2. これからの社会変化は、「相互に繋がったコミュニティ」によって伝播する。
3. これからの企業は、「市場から」ではなく「コミュニティから」発想して価値をつくる。
4. これからのイノベーションは、「新たなコミュニティの単位」の発見、可視化、活性化を実現することになる。
5. これからのワーカは、「組織から」ではなく「個のつながり(コミュニティ)」で仕事をつくる。
6. これからの仕事環境は、「組織に囲われた場所」ではなく、「コミュニティに開かれた場所」になる。
7. これからの人材育成は、「多様な人と人のつながり」により、「いつもの領域超え(冒険)」の機会をつくる。
8. これからの組織は、役割ではなく「人」として存在できる「安心な場(コミュニティ)」 になる。
9. これからの地域コミュニティは、世代や地域を超えてつながるための「主体性を引き出す劇場」を持つ。
10. これからの経済は、「コミュニティを中心に動く」ようになる。
つまり、コミュニティを育むことが、企業のマーケティング活動そのものになってくるということです。マーケティングの父であるコトラーは、このようなパラダイムシフトを「利用者がパートナーになる時代」という意味で、マーケティング3.0と名付けました。
このようなパラダイムシフトは、確実に起こりつつあります。ソーシャルメディアの台頭は、その前兆です。世の中に新しいアイデアを伝える力は、大企業のプレスリリースよりも、影響力のある個人のブログの方がすでに優ってきています。
行政や企業という組織体が世の中を動かしてきたのは、組織として蓄積してきた情報や知識の質も量も、個人やコミュニティを圧倒していたからです。また、組織内の情報共有の方が、組織を越えた情報共有よりも、明らかにコミュニケーション・コストが低かったからです。これを大きく変えたのが、情報通信革命であることは、疑う余地がありません。
すでに情報産業、コンサルティング業界などの知的業務では、「会社の中でできること」と「家やカフェでできること」の差が、ほとんどなくなってきました。このことが、社会起業家の影響力の増大や、コ・ワーキングスペースの急速な増加につながっています。
フューチャーセンターは、市民に社会変革のイニシアティブを移し、その結果、企業の商品・サービス開発のプロセスを一変させてしまうことになるでしょう。








